2011パナソニックオープン観戦記      72年度 松田 研二

 数年前に年に50回程プレーしていたゴルフ・マイブームは過ぎ去った感がありますが、今も男女のプロのトーナメントは欠かさずTV観戦して少しでもスコアアップにつなげようという涙ぐましい努力だけは続けています。これまで男女プロのトーナメントをコースに出向き数回観戦したことがありますが、特に谷口さんご夫妻に出会った琵琶湖カントリー倶楽部での2011パナソニックオープンが思い出されます。
 パナソニックオープンは毎年会場が変わり、関西の名門コースを転々としていますが、2011年の会場となった琵琶湖カントリー倶楽部は滋賀県で最初に出来た由緒あるコースです。9ホールのコースが3つあり、使われない9ホールが朝の練習会場となっていました。ギャラリーは練習を自由に見ることが出来ます。バンカーではピンの位置をグリーンの手前の方、奥の方と自分で設定してその場所に多くのボールを落としている選手もいます。パー4のホールを利用したショット練習場の後側には立派なスタンドまで用意してありかなり本格的です。当時人気と実力がかみ合っていた石川遼をはじめ、近藤共弘、片山晋吾、小田孔明、金庚泰、池田勇太、宮本勝昌などの有名プロたちがウォーミングアップに余念がありません。グッドショットを打とうとするあまりついつい上半身に力が入り過ぎるアマチュアと違い、プロは軽くクラブを振っているように見えます。しかしボールはほれぼれする弾道でロングアイアンやショートウッドで軽々と200ヤードラインを超えていきます。しかもほぼ真っ直ぐです。上半身に余計な力を入れず身体の回転で打っているのが素人目にもわかります。肩は良く回っていますが下半身の体重移動は見た目にはそれほど感じられません。皆フィニッシュが決まっていて、ボールの行方を追いしばらく動きません。下半身が実にどっしりとして安定しています。打つ前にフィニッシュの形をイメージしてヘッドスピードを上げている感じがします。アマチュアはボールに神経が集中しがちですが、プロはスイングの通過点でヒットしている感じがします。
 この試合では不調で3組目8時スタートの石川遼、金庚泰(キムキョンテ、韓国)、ラヒリ(インド)の組を追いかけることにしました。インドの選手はパナソニック主催のインドでの試合の優勝者です。ホールそのもの、つまりフェアウェイとラフは選手たちがプレーを行い独占していますので、ついて回っているギャラリーはあまりまともなところは歩けません。特に琵琶湖カントリーは片側が松林ということが多く、小山のようになっていてアップダウンがあるところを早足で、時には走りながらの移動ですので選手に追いつくのが大変です。私は最初、ティーショットからセカンド、アプローチ、パットまで全部見て完結という感じで追いかけていました。そのうちにコツがわかってきて、全部を欲張って見るのではなく(物理的に無理)、どこかをパスすればいいことに気づきました。そのホールと次のホールは、例外はあるもののほぼ往復するようなレイアウトになっていることが多いので、グリーン上のプレーを見た後は、次のホールのティーショットは捨てて第2打地点まで急ぎ待っていればいいわけです。

男子プロのトーナメントの中でも日本オープンなどのメジャー競技は非常に設定を厳しくしているものですが、パナソニックオープンの設定も遜色なく、ティーショットがラフに入るとバーディはあきらめて、パーキープに方針を変えなければならないほどです。そのためパーオンせずアプローチに失敗するとすぐボギーも出る感じです。4番ホール490ヤードパー43人ともラフの同じような場所に入れたのを、すぐ近くで見ることが出来ました。係員がボール位置にフラッグを立てていますが、近くにいても全くボールのありかがわかりません。完全にラフにもぐりこんでいます。プロですので皆果敢にグリーンを狙いますが、結局3人共ツーオンが出来ませんでした。石川遼はバンカーに入りかけの深いラフの難しい左足下がりのライからの一打でグリーンオン出来ず、4オン1パットのボギー、金庚泰はグリーン横のこれも深いラフからでしたがナイスアプローチでパーをキープ。次のホールのパー3200ヤード超の打ち上げです。石川遼はロングアイアンを使い低い弾道で打ちましたがボールは途中から重力に逆らってグーンと上がり、ふわりと落ちグリーンエッジで止まりました。結局全員オン出来ませんでしたが皆ナイスアプローチで手堅くパーキープしました。このような感じであっという間に前半が終わりましたが、3組目(前日までの成績の悪い順にスタート)ということもあり、皆調子はいまひとつのようでした。

ずっと早足ベースで歩き大分疲れが溜まってきた9番ホール終了時点で、同じく観戦に来られていた谷口さんご夫妻と遭遇しました。そこで、石川遼のパーティについて行くのはやめて、最終18番ホールグリーン奥に設置されたスタンドでの観戦に切り替えることにしました。ゴルフ観戦には、同じホールで動かずに通過して行く選手を全て見る方法と、ひいきの選手について回る方法と2種類あります。当日は決勝ラウンドにもかかわらず、予選通過選手が多かったためかアウトとインの同時進行でした。そのため最終18番ホールでのスタンド観戦にもかかわらず、待つ間もなくインスタートの選手が18番ホールに次々とやってくるので、すぐにプレーを観戦出来ました。しばらくするとスタンドは満杯になり入場制限も行われましたので、結果的には早々と特等席を確保した形になりました。そのうちに石川遼が来るということで、スタンドに入れない人も含めてグリーン周りにはにわかにギャラリーが増えています。何重にもなっているので後ろの人は見ることが出来ないほどです。石川遼はグリーンで上りのバーディチャンスに付けましたが、しっかりと打てずに大分ショートしてパーに終わりギャラリーもため息です。ホストプロ(当時)ではありましたが、今大会の不調を象徴するかのようで、結局34位に終わりました。全般にティーショットが曲がってフェアウェイ確保が出来ず、ラフに苦しめられた4日間だったようです。ラフは何しろ100130mmにカットされていますので、ボールが入ると全く見えません。アマのアベレージゴルファーだと出すだけ、あるいは距離を欲張ると再びラフにという感じの厳しい設定です。とてもグリーンを狙えるとは思えないのですが、プロたちはパーを取って当たり前の世界で1打が大事なので、パー4だとラフに入ってもレイアップは頭になく果敢にグリーンを狙います。たとえグリーンに乗らなくても、グリーン周りの深いラフやバンカーからのアプローチで確実に寄せるスキルがあるので気にしてないようです。
 谷口さんご夫妻は18番での石川遼のプレー終了と共に帰路につかれましたので、その後表彰式まで一人で観戦しました。スタート時点ではトップだった韓国のS.K.ホがサンデーバックナインでスコアを崩す中、地元の瀬田に自宅がある平塚哲二が奇跡的な11番ホールでのイーグル(第2打バンカーからの162ヤードが直接カップインしたとのことで、帰宅後の録画を見ても、11番は放送ホールではないためこの場面は残念ながら見ることは出来ませんでした)で追いつき、その後もバーディを重ね、18番では難しい距離のパーパットを沈め喝采を浴びていました。終わってみれば2位に3打差をつけてパナソニックオープン初優勝を飾りました。
 私は2年前から悩んでいた左の五十肩がようやくほぼ元に戻りましたが、持病の腰痛が慢性気味となり、このところ練習はプレー当日の早朝だけです。今年は平均月2回のペースでプレーしていますが、練習をしていないため、コースでのぶっつけ本番となりますのでスコアがまとまらず、一頃は自己目標だった90切りからはほど遠く、調子が良いときもギリギリで100切りといったところです。今年11月に還暦を迎えますが、年を取っても楽しめるのがゴルフです。あと何年出来るかわかりませんが、自分の身体にもう無理だと言われない限り、続けて行こうと思います。安藤さんという元気な先輩もおられますので見習いたいです。来年の総会翌日のコンペでの皆様とのお手合わせを楽しみにしています。