いちまいの写真から
64年度 谷 口 明
先ずは、表題の写真を撮ることになった経緯から書かせていただきます。
もう今となっては大昔になってしまいましたが、49年前で私の大學2年の年です。
昭和39年、新幹線が開通し、秋には東京でオリンピックがありました。
山岳スキー部創部10周年記念祭が琵琶湖の湖畔で開催されましたのもこの年でした。
その年の事は結構しかりと憶えています。
夏には新穂高から槍ヶ岳に登り、双六岳・三俣蓮華岳・黒部五郎岳を縦走し、薬師岳を越えて立山までの夏合宿のあいだの出来事など・・・。
振り返ってみれば、過ぎた人生の中では、自由に振舞い最も輝いていた時期かもしれません。
当時、在部していたメンバーも、今では音信不通であったり、亡くなられた方もあり、50年の歳月を感じます。
今もってお付き合いの続いている方々は、皆さん元気で近郊の山行などご一緒させていただき有難い限りです。
そんな同窓の方達と、今の夏に49年振りの夏合宿を実行してみました。
互いに70歳近くになり、仕事も離れ時間的に余裕が出来て、元気な内にと意気投合しました。
コースは八方尾根を唐松岳に登り五竜岳・鹿島槍ヶ岳を通り、爺ガ岳から扇沢へ下るルートで計画しました。
途中に大キレットがあるので、小屋泊まりで荷物を軽くして臨みました。
登山の初日、前日に京都を立ち岩岳荘にお世話になって、一夜しっかりと飲んで楽しみにした朝でしたが、屋根をたたく大雨でした。
一時はあきらめて着替えもせずに窓を恨めしく覗いていますと、7時頃になると急に小雨になり西の空に雲の切れ目が現れたりしました。
急遽、遠見尾根から登るルートに変更し、五竜スキー場の登山口へ向いました。
ロープウエーで1600mのケルンまで運んでもらい、ザックを担ぎ登り始めることにしました。
後立山連峰は当然の如く雲の中でした。
「まあ、がんばって登ろうや!」と一歩を踏み出す前に撮ったのがこの一枚の写真です。
全員、雨対策の装束で構えています。
歳相応のくたびれた姿ではありますが、各々の目が輝いています。
最近、時間ばかりを持て余し、「さて、今日は何をしょうか?」と考えているときの目はぼんやりとしていることが多くなりました。
幾つに成っても、少々身体のパーツに痛みを感じることがあっても、何か目標を持つ必要性を感じさせられた写真でした。
若いときは常にこんな目で日々を送っていたことでしょう。
そして、今回の合宿は雨・風・霧と悩めせられましたが、登山2日目の昼になりやっと晴れ間が見え、鹿島槍ヶ岳の頂に立ったときには剣岳・立山まで遠望でき夏山を感受し、半世紀振りの夏合宿を実行してよかったと感激でした。
その折にも記念写真を撮りましたが、前述の写真ほどの瞳では残念ながらありませんでした。
何時までも行動的であり、目に輝きが持ち続けられるように努めねばと教えられた一枚の写真に対する思いです。