琵琶湖の100倍のアラル海消え去る

 

1957年度生「経済」 仕名野完治

 

 もう海外の山も、ハイキングも、スキーも出来ない体力になってしまったが、天山山脈やパミール高原の西方の中央アジアに旅したくなり、年寄り三人で5月に出かけた。

 仲間の一人(長老)でリーダー格のKさんが船の墓場であるウズベキスタンのアラル海に面した港町(ムイナク)へ行きたいと音頭取りをかってでた。

 「ムイナク」には、過去に缶詰工場が沢山存在したが、今は廃墟と化していた。湖は干上がって錆びた船がゴロゴロ転がっていた。湖は今も縮小を続け、砂漠化し有害物質や塩が1,000キロも遠方へ飛散して公害問題を起こしている。

 山に降った雨や雪は、川を流れ海に注ぐものと小さい頃はそう思っていたが、中央アジアや新疆ウィグル地区は違った。タクラマカン砂漠の北縁のウルムチ、トルファン、カシュガルを旅して思ったことは、天山山脈やパミール高原、カラコルム山脈の5,0007,000米の高山から流れ出た水は、長大な河川となり内陸部の湖か砂漠に消え去ってしまうと云う。不思議であった。

 湖に溜まるのは分かるにしても、砂漠に消えるのはチト解りかねる。流れる内に水は蒸発して消え去るのか?そうではないと思う。タクラマカン砂漠の地下には巨大な水がめ湖が存在すると思う。京都の巨椋干拓地もそうだと思う。

 今回のアラル海に注ぐアムダリヤ河は巾23キロ、長さ2,620キロと長大である。もう一つのシルダリヤ河もアラル海に注いでいるが、1960年代に大量の灌漑用水を取水して綿花を栽培するようになった。アラル海に流入する水量は蒸発量を遥かに下回るようになり、1980年代にアラル海は南北に分かれてしまい、今なお縮小を続けている。

 現在、アムダリヤ河の水は一滴もアラル海に注いでいない。そのせいでアラル海は以前の10%の水量に激減している。そして、今世紀中に消滅するだろうと云われています。人類が豊になろうとしてやってきた事が自然からしっぺ返しを喰った恰好である。

 自然のバランスを壊すと必ず自然からしっぺ返しを喰うのが昨今の自然災害だとつくずく思った。